開業を考え始めると、一人で進めることに不安を感じることがあります。
「友人と一緒なら心強い」
「得意な仕事を分担すればうまくいきそう」
「二人で資金を出せば始めやすい」
「相談しながら進められる方が安心できる」
こう考えること自体は、不自然ではありません。
開業前は、事業内容、資金、商品やサービス、集客、会計、手続きなど、分からないことが多くあります。誰かと一緒に進めたくなるのは当然です。
ただし、一人では心細いという理由だけで共同経営を選ぶことは、慎重に考える必要があります。
共同経営は、単に二人で仕事を分担することではありません。
一つの事業について、責任、判断、お金、利益、損失、将来を共有することです。
始める前に曖昧だったことは、事業が動き出してから問題になりやすくなります。
共同経営にはさまざまな形がある
共同経営という言葉には、法律上決まった一つの形があるわけではありません。
実際には、次のような形があります。
- 二人で会社を設立する
- 一人が代表者となり、もう一人が役員になる
- 一人が個人事業主となり、もう一人が業務を担当する
- 別々の事業者として協力する
- 夫婦や家族で一つの事業を運営する
表面的には二人で働いていても、誰が事業主なのか、誰がお金を出すのか、誰が責任を負うのかによって関係は異なります。
最初に考えるべきなのは、
二人で頑張れるか
だけではなく、
どのような関係と仕組みで事業を運営するのか
という点です。
共同経営のメリット
共同経営そのものが悪いわけではありません。
役割と責任を整理できれば、一人では難しい事業を実現できる可能性があります。
得意分野を補い合える
一人が商品やサービスを担当し、もう一人が営業や経理を担当するなど、それぞれの強みを生かせます。
事業に必要な能力が異なる場合、相互に補えることは共同経営の強みです。
資金や設備を持ち寄れる
一人では用意しにくい開業資金、設備、仕入れ先、人脈などを持ち寄れる場合があります。
ただし、負担する金額や提供するものが違う場合は、利益や権限の扱いも考える必要があります。
意見を出し合える
一人では気づかなかった問題や改善案が見つかることがあります。
重要な判断に複数の視点を取り入れられることは、共同経営の利点です。
業務を分担できる
接客、営業、仕入れ、製造、発送、会計などを分担できれば、一人に負担が集中することを防げます。
ただし、業務を分担したいだけなら、外注や雇用で対応できる場合もあります。
仕事を分けることと、経営権を共有することは別の問題です。
共同経営で起こりやすい問題
共同経営で問題になりやすいのは、始める前に決めなかったことです。
友人や家族など、親しい関係ほど、
「細かく決めると信用していないように思われそう」
「その時になったら話し合えばよい」
「お互いに分かっているから大丈夫」
と考えやすくなります。
しかし、事業が始まると、売上、作業量、責任、生活状況などが変わります。
最初は気にならなかった違いが、次第に大きな不満になることがあります。
作業量に差が出る
最初は同じくらい働く予定でも、実際には一方の負担だけが増えることがあります。
接客や顧客対応、事務作業、休日の対応など、外から見えにくい仕事もあります。
利益を同じように分けていても、働く時間や責任に大きな差が出れば、不満が生まれます。
お金の使い方で意見が分かれる
設備投資をするか、広告費を使うか、現金を会社に残すかなど、お金の判断は頻繁に発生します。
一方は積極的に投資したいと考え、もう一方は支出を抑えたいと考えるかもしれません。
売上が伸びている時よりも、資金が少なくなった時に考え方の違いが表面化しやすくなります。
利益の分け方で揉める
「二人で始めたから半分ずつ」という決め方が、必ずしも公平とは限りません。
出資した金額、働いた時間、担当する仕事、負っている責任などが違う場合があります。
利益をどう分けるかだけでなく、働いたことへの報酬と、出資したことへの利益を分けて考える必要があります。
最終的に決める人がいない
意見が一致している間は問題ありません。
しかし、借入れ、価格変更、移転、採用、撤退など、意見が分かれる場面は必ず出てきます。
二人が対等で、意見が割れた場合の決め方がなければ、事業が止まります。
一方が辞めたくなる
売上が伸びない、仕事が想像より多い、生活が苦しくなるなどの状況が続けば、一方が辞めたいと考えることがあります。
その時に、在庫、設備、借入れ、顧客情報、屋号などをどう扱うかが問題になります。
事業の問題が人間関係の問題になる
友人や家族との共同経営では、仕事上の対立が私生活にも影響します。
親しい関係だから取り決めが不要なのではありません。
親しい関係を守るためにも、事前に確認しておくことが必要です。
共同経営を始める前に決めること
共同経営を検討する場合は、少なくとも次の内容を話し合います。
事業の目的と将来像
何のために事業を始めるのかを確認します。
生活できる収入を得たいのか、副業として続けたいのか、店舗を増やしたいのかによって、必要な投資や働き方が変わります。
一方は事業を大きくしたいのに、もう一方は無理なく続けたいと考えている場合、いずれ方針が衝突します。
出資と負担
誰がいくら出すのか、どの設備や商品を持ち込むのかを決めます。
利益の分け方だけでなく、赤字になった場合に誰が追加で資金を出すのかも考える必要があります。
役割と責任
誰が何を担当するのかを決めます。
大まかな担当だけでなく、日常的に発生する仕事や、問題が起きた時の対応者も確認しておきます。
役割を決めるだけでなく、最終的な責任を誰が負うのかも重要です。
報酬と利益の扱い
毎月どのようにお金を受け取るのか、利益をどの程度事業へ残すのかを決めます。
売上が少ない時や赤字の時にも、同じ報酬を受け取るのかという点も考えます。
意見が割れた時の決め方
担当分野ごとに決定権を分ける、一定額以上の支出は全員の同意を必要とするなど、判断のルールを決めます。
「話し合えば決まる」という前提だけでは不十分です。
辞める場合の扱い
一方が辞めたい場合、病気などで働けなくなった場合、事業を解散する場合の扱いを決めます。
共同経営は、ずっと続くことだけを前提にせず、終わる可能性も含めて考える必要があります。
50対50なら公平とは限らない
二人で会社を作る場合、平等にするために出資や権利を半分ずつにしたいと考えることがあります。
公平に見える一方、意見が割れた時に、どちらも最終決定できなくなる可能性があります。
平等にすることと、事業を円滑に運営できることは同じではありません。
出資割合や議決権、役員構成は、会社の重要な判断に関わります。実際に会社を設立する場合は、専門家へ確認する必要があります。
口約束だけで始めない
共同経営を始める場合は、話し合った内容を書面に残します。
少なくとも、次の内容は明確にしておく必要があります。
- 事業の内容
- 出資
- 役割
- 報酬
- 利益と損失
- 決定権
- 辞める場合の扱い
- 事業を終了する場合の処理
実際に必要となる契約や文書は、事業形態によって異なります。
インターネット上のひな形だけで判断せず、弁護士、司法書士、税理士などへ確認してください。
一人で抱え込まないことと、共同経営は違う
一人で事業を始めることは、すべてを一人で抱え込むことではありません。
共同経営者を入れなくても、足りない部分を補う方法はあります。
相談相手を持つ
事業経験のある人や、同じように事業を運営している人へ相談できます。
相談相手は意見を提供しますが、経営権や利益を共有する必要はありません。
必要な仕事だけ外注する
デザイン、広告、経理、発送など、苦手な部分だけを外部へ依頼できます。
従業員を雇う
現場作業や定型的な仕事を補いたい場合は、従業員やアルバイトを雇う方法があります。
業務提携をする
別々の事業者として、必要な部分だけ協力する方法もあります。
商品開発や販売など、特定の業務だけを共同で行うこともできます。
必要なのが経営者なのか、相談相手なのか、外注先なのかを分けて考えることが重要です。
共同経営は、不安を減らすためではなく事業を強くするために選ぶ
共同経営には、得意分野を補い合い、一人では難しい事業を実現できる可能性があります。
一方で、責任、判断、お金、権利を共有するため、始める前の設計が必要です。
共同経営を検討するときは、次の点を確認します。
- 一緒に経営する必要が本当にあるか
- 役割と責任を明確にできるか
- 出資と報酬を説明できるか
- 赤字や借入れの負担を決められるか
- 意見が割れた時の決め方があるか
- 辞める場合の条件を決められるか
- 取り決めを書面に残せるか
「一人より二人の方が安心」という理由だけでは、共同経営を選ぶ根拠として十分ではありません。
誰かの力を借りることと、経営権を共有することは違います。
共同経営は、心細さを埋めるためではなく、事業をより強くするために選ぶものです。
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開業までに何を考えるかを整理するロードマップやチェックリスト、資金計画、開業後の行動や事業継続を確認する資料など、さまざまな場面で利用できます。
資料は今後も追加・改良し、分からないことやつまずいた点は、オープンチャットや公式LINEで質問・相談できます。
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※本記事は、共同経営を検討する際の一般的な考え方を整理したものです。会社の出資比率、株式、持分、役員構成、契約、税務、借入れ、許認可などは、事業形態や個別の状況によって取扱いが異なります。実際に共同経営、会社設立、出資、契約を行う場合は、弁護士、司法書士、税理士、行政書士などの専門家へご確認ください。



