開業場所の選び方は、店舗や事務所を始める際の大きな判断の一つです。
「人通りの多い場所がよい」
「駅から近い方が集客しやすい」
「できるだけ家賃の安い場所を借りたい」
「広くてきれいな物件なら、長く使えそう」
物件を探し始めると、こうした分かりやすい条件へ目が向きます。
しかし、すべての事業に適した万能の場所はありません。
人通りが多くても、自分のお客様になりそうな人が通っていなければ、売上にはつながりません。
駅から近くても、車で来店するお客様が中心なら、駐車場のあるロードサイドの方が利用しやすい場合があります。
家賃が安くても、看板を出せない、入口が分かりにくい、希望する営業ができないといった問題があれば、開業後の負担になります。
場所を探す前に考えたいのは、次のことです。
自分の事業には、どのような場所が必要なのか。
この記事では、開業場所を選ぶ際の基本的な考え方を整理します。
開業場所は、事業に必要な条件から考える
物件情報を見ると、駅からの距離、広さ、建物の新しさ、家賃などを比較しがちです。
これらは重要な情報ですが、条件がよく見える物件が、自分の事業に合うとは限りません。
例えば、予約制で一日に数人だけが来店する事業なら、駅前の高い家賃を負担する必要がない場合があります。
一方で、大きな商品や荷物を扱う事業では、駅からの距離よりも、駐車場や搬入のしやすさが重要です。
物件を見る前に、最低限必要な条件を書き出します。
例えば、次のような内容です。
- 希望する業種で営業できる
- 想定するお客様が来店しやすい
- 希望する営業時間で利用できる
- 必要な設備を設置できる
- 看板を出せる
- 在庫や商品を置ける
- 家賃と固定費を負担できる
物件に事業を合わせるのではなく、事業に合った物件を探すことが基本です。
家賃は、契約できる金額ではなく続けられる金額で考える
開業場所を選ぶ際、家賃は大きな判断材料になります。
ただし、現在の資金で契約できるかだけで決めてはいけません。
売上が少ない月にも、支払いを続けられるかで考えます。
店舗には、家賃以外にも次のような費用がかかります。
- 共益費や管理費
- 駐車場代
- 電気・水道・ガス代
- 通信費
- 保険料
- 設備の保守費用
- 更新料
契約時には、敷金、保証金、礼金、仲介手数料、内装工事、看板、設備などの費用も発生します。
さらに、物件を借りてから開店するまでの間にも家賃がかかる場合があります。
内装工事や営業許可の取得に時間がかかれば、売上がない状態で支払いだけが始まります。
家賃は、売上が順調な場合ではなく、想定より売上が少なかった場合にも維持できる金額で考えることが重要です。
人通りは、多さよりお客様との相性を見る
人通りが多い場所は、集客しやすく見えます。
しかし、人が多いことと、お客様が来店することは同じではありません。
確認したいのは、次のような点です。
- 自分のお客様になりそうな人がいるか
- 営業予定時間に人が動いているか
- 店舗や看板に気づいてもらえるか
- 立ち止まりやすい場所か
- 商品やサービスの価格帯が地域に合っているか
駅前は人が多くても、通勤や乗り換えで急いでいる人ばかりかもしれません。
住宅地は人通りが少なくても、地域住民が繰り返し利用する事業には合う場合があります。
目的を持って来店する専門店なら、通行量が少なくても成り立つ可能性があります。
大切なのは、人が多い場所ではなく、自分のお客様が利用しやすい場所です。
商圏と来店方法を考える
商圏とは、その店舗へお客様が来る範囲です。
場所を選ぶ際は、距離だけでなく、お客様がどのように来店するかを考えます。
- 徒歩
- 自転車
- 車
- 電車やバス
- 近所からの来店
- 遠方から目的を持った来店
- 通勤や通学途中の利用
例えば、大きな商品を持ち帰る店舗では、駅から近くても徒歩客には利用しにくい場合があります。
予約制のサービスであれば、駅から少し離れていても、道案内が分かりやすければ営業できる可能性があります。
開業場所の選び方は、業種だけでなく、お客様の来店方法によっても変わります。
駅近かロードサイドかは、来店方法で選ぶ
駅近とロードサイドのどちらがよいかは、事業によって異なります。
駅近が合いやすい事業
- 徒歩で来店するお客様が多い
- 通勤や通学途中に利用される
- 荷物が少ない
- 予約制で来店時間が決まっている
- 短時間で利用するサービス
ロードサイドが合いやすい事業
- 車で来店するお客様が多い
- 大きな商品や荷物を扱う
- 家族や複数人で来店する
- 在庫や設備に広さが必要
- 商品の搬入搬出が多い
駅近は便利ですが、家賃が高くなりやすく、広さや搬入条件が限られることがあります。
ロードサイドは車で利用しやすい一方、徒歩や公共交通機関で来るお客様には不便になることがあります。
「駅から近い方がよい」と決めつけず、お客様の利用方法から判断します。
看板と入口の分かりやすさを確認する
来店型の店舗では、外から何の店か分かり、入口を見つけやすいことが重要です。
物件を確認する際は、次の点を見ます。
- 道路から店舗が見えるか
- 看板を出せるか
- 入口が分かりやすいか
- 外から何の店か伝わるか
- 段差や階段が来店の負担にならないか
- 夜でも入口が分かるか
2階や奥まった場所でも、予約制や紹介中心の事業なら成り立つことがあります。
一方、通りがかりのお客様を取り込みたい事業では、入口の分かりにくさが大きな不利になります。
看板や入口の条件は、契約後に自由に変更できない場合があります。
内見時に確認しておく必要があります。
契約前に、希望する営業ができるか確認する
「店舗として借りられる物件」と「自分の事業を営業できる物件」は、同じではありません。
契約前に、少なくとも次の内容を確認します。
- 希望する業種で利用できるか
- 営業時間に制限がないか
- 看板や内装工事が可能か
- 必要な電気・給排水・ガス設備があるか
- 営業許可や届出を取得できるか
- 消防設備の追加が必要か
- 原状回復の範囲
- 解約条件や更新条件
建物の用途や地域によっては、営業できる業種や建物の使い方に制限があります。また、飲食店など食品を扱う事業では、営業許可や施設基準の確認が必要です。消防法令上、物販店や飲食店などの用途では、必要な消防設備の設置や維持が求められる場合があります。契約や工事を始める前に、自治体、消防署、保健所などへ確認することが重要です。
不動産会社や大家から「店舗利用可能」と言われても、自分が行う具体的な営業まで確認されているとは限りません。
気に入った物件ほど、契約前の確認を慎重に行います。
最初から固定店舗を借りない方法もある
開業場所を考えるとき、最初から固定店舗を借りる必要がない場合もあります。
例えば、次のような方法です。
- レンタルスペース
- シェア店舗
- 間借り営業
- ポップアップ出店
- マルシェや催事
- 移動販売
- ネット販売
- 訪問型サービス
固定店舗を借りる前に小さく試すことで、次のことが見えてきます。
- どの地域からお客様が来るか
- 車と徒歩のどちらが多いか
- どの時間帯に利用されるか
- 必要な広さや設備
- 商品やサービスへの反応
売上やお客様の動きが分からない段階では、小さく試してから固定店舗を探す方が安全な場合があります。
店舗を持つこと自体を目的にせず、事業を始めるために本当に固定店舗が必要かを考えます。
良い開業場所とは、事業を続けやすい場所
良い開業場所は、駅から近い場所でも、人通りが最も多い場所でも、家賃が最も安い場所でもありません。
自分の事業に必要な条件を満たし、費用を負担しながら営業を続けられる場所です。
場所を選ぶ際は、次の点を確認します。
- 自分のお客様が利用しやすいか
- 希望する営業ができるか
- 家賃と固定費を払い続けられるか
- 看板や入口が分かりやすいか
- 日々の運営に無理がないか
- 契約や許可に問題がないか
物件を先に決めてから事業を合わせるのではなく、事業内容とお客様を整理してから場所を探します。
気に入った物件を見つけたときほど、
この場所で何ができるか
ではなく、
自分の事業に必要な条件を満たしているか
を冷静に確認することが大切です。
実際の候補物件を比較するには、さらに細かな確認が必要です
ここまで紹介したのは、開業場所を選ぶ際の基本的な考え方です。
実際に候補物件を比較する段階では、さらに次のような確認が必要になります。
- 譲れない条件と不要な条件の整理
- 営業時間ごとの人や車の動き
- 駐車場の入りやすさ
- 看板の見え方
- 入口や段差
- 搬入搬出と作業動線
- 近隣店舗や住民との相性
- 契約条件と退去時の負担
- 開業資金とのバランス
- 複数の候補物件の比較
業種が違えば、優先する条件も変わります。
同じ物件でも、飲食店、物販店、予約制サービス、事務所、倉庫では評価が異なります。
物件の見た目だけでなく、自分の事業へ当てはめて確認することが必要です。
開業と事業継続に役立つ実務資料を用意しています
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開業場所についても、一般的な考え方を知るだけでなく、自分の事業に必要な条件や、候補物件を比較する際の確認点を整理できます。
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※本記事は、開業場所や店舗物件を検討する際の一般的な考え方を整理したものです。用途地域、建築用途、用途変更、消防設備、営業許可、契約条件などは、物件、地域、事業内容によって異なります。物件を契約する前に、不動産会社、大家、自治体の建築担当部署、消防署、保健所、行政書士、建築士などへご確認ください。


