ニューヨーク発祥の世界的メンズブランド・エンジニアドガーメンツ(ENGINEERED GARMENTS)。
「ガーメンツ」の愛称で、日本でも熱烈なファンを多く抱えています。
経年劣化すらも味になるそのデザインは、古着の世界でも人気です。
そんなガーメンツのコンセプトは「完成された不良品」。
この言葉どおり、数あるメンズブランドの中でも特に尖ったものの一つです。
そして、その「尖り方」の中には、人生のヒントがあります。
この記事では、まずガーメンツの魅力をお伝えします。
そして、その魅力から学べる人生のヒントをお話ししていきます。
日本人デザイナーが生み出した「アメリカ人よりアメリカらしい」ブランド
ガーメンツは1999年に誕生しました。
生み出したのは日本の会社「ネペンテス」。
もともと 「ネペンテス」 は、アメリカからの輸入販売を手掛けていましたが、 その会社が自社ブランドとしてガーメンツを創設したのです。
ガーメンツ創設当初から、今まで一貫してデザインを手掛けているのが、デザイナー鈴木大器さん。
2008年には、アメリカで最も活躍したデザイナーに贈られる 「CFDAベストニューメンズウェアデザイナー賞」を受賞しています。
そして、鈴木さんのデザインはBEAMSの公式サイトでも「アメリカ人よりもアメリカらしい洋服をつくる」と評価されています。
「たった一つ」を光らせるために、、、
エンジニアドガーメンツは「巧みに設計された洋服」という意味。
その「設計」という言葉に、最初に書いた「人生のヒント」があります。
鈴木さんは、ガーメンツのデザイン哲学を「完璧でないこと」と語ります。
「いい生地、いいカット、いい縫製、いいデザイン…。そういう服は好きじゃない」というのです。
鈴木さんが目指すのは「たった一つ、光るものがある服」。
「安い生地でも、ひどい縫製でも、変なデザインでも、たった一カ所光るものがある服」です。
「他の部分は全部ひどいけど、そのたった一つの魅力があるから買う」といわれるような服―。
それが、鈴木さんとガーメンツが目指す服です。
もちろん「ただのダメな服」に、一点だけ目立つデザインを入れても意味がありません。
あくまで「他のダメな部分」も「愛すべきもの」になるような組み合わせを考える必要があるのです。
ガーメンツの「巧みな設計」とはそういう意味です。
たった一つの良さを「わかってくれ!」とワガママに押し出すのではありません。
その良さが光るよう「ダメな部分も含めて整える」のです。
本当に尖りたいなら
ガーメンツは誰しもが認める「尖っている」ブランドでしょう。
そして、その尖りは「絶妙なバランス感覚」によって保たれています。
その尖りを生かすバランス感覚が、ガーメイツを光らせているのは間違いないでしょう。
相手を引き立てる技術
そして、特筆すべき点がもう一つ。
それは、ガーメイツのイメージにこだわることなく挑戦する 「他ブランドとのコラボ」 でしょう。
たとえば、ユニクロとのコラボでは、最安のアイテムは何と1,990円。
ガーメンツのイメージを打ち破るプライシングで、大きな話題を呼びました。
また「蜜月」ともいわれるほど度々コラボしているブランド・バブアー。
バブアーは1800年代から続く老舗の名門ブランドです。
このコラボでも、鈴木氏はバブアーらしさを前面に出しています。
「バブアーの社員になったつもりで」個性を押さえたそうです。
「自分らしさをデザインに入れるよりも、オリジナルの良さを生かすデザインを心がけている」とインタビューで語る鈴木さん。
コラボの相手を常にリスペクトする姿勢と相手を光らせることができるバランス感覚。
その姿勢と感覚があるからこそ、ガーメンツのデザインは「世界で尖る」ことができたのでしょう。
さいごに
古着やファッションが好きなら「尖った生き方」に憧れる方も多いでしょう。
しかし、尖った生き方とは?
ガーメンツを見ると「尖るとは、自分勝手に生きることではない」ということを感じることができます。
そして、
・ダメな部分はあってもいい
・むしろ、ある方がいい
・でも、ダメなまま放置していてはいけない
ということもわかるでしょう。
ダメな部分を知り、自身の良い部分を最大限に活かす。
ガーメンツの哲学に学び、「 巧みに設計された人生」を生きてみよう。
ライター:藤井誠二
フリーライター&元イラストレーター。自分の会社を経営しつつ、アパレルビジネスに関する記事を、業界各社の媒体で執筆しています。
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