古着衛門を始めたばかりの頃の話です。
商品をそろえ、お店を作り、ようやく営業を始めました。
でも、実際にお客様を迎えるようになって、すぐに一つの問題に気づきました。
お店はできた。でも、お客様に伝えたいことを伝える方法がない。
毎日のように同じ質問をいただきました
「休みはいつなの?」
「営業時間は何時まで?」
営業を始めると、こうした質問を毎日のようにいただきます。
聞いてくださったお客様には、その都度お答えできます。
でも、もちろん全員が聞いてくださるわけではありません。
興味はあるけれど聞かない方もいる。
聞こうと思っていたけれど、タイミングがなかった方もいる。
そして、お店側からすれば営業時間や休業日だけではありません。
セールの日、会員制度、イベント、お得な情報。
知ってもらえれば、また来店していただくきっかけになるかもしれない情報がたくさんあります。
掲示すれば伝わる、とは限りませんでした
もちろん、古着衛門でも店内には案内を掲示していました。
でも、店舗を運営していると分かってきます。
「読む」という行為は、意外とハードルが高い。
その情報に興味がある方なら読んでくださいます。
けれど、店内にある掲示物を一つひとつ読む方ばかりではありません。
だからといって、伝えたいことを全部貼り出していけば、今度は情報が多くなります。
案内が増えるほど、かえって何を見ればよいのか分かりにくくなる。
そこで考えたのが、店内放送でした。
読むためには「見よう」「読もう」という行動が必要です。
でも、聞くことはもっと自然です。
商品を見ていても、店内を歩いていても、音声なら耳に入ってきます。
掲示をなくすためではありません。
掲示だけでは届かない情報を、音でも届ける。
古着衛門では、そこから店内放送を使うようになりました。

当時は、いくつものフリーソフトを組み合わせていました
今から15年ほど前です。
現在のように、欲しい機能を一つのアプリとして簡単に作れる環境ではありませんでした。
そこで、窓の杜などで見つけたフリーソフトをいくつか組み合わせ、古着衛門でやりたいことに合わせて実用化していました。
時間になると店内アナウンスを流す。
セールの日や水曜日の割引、セール予告メールを出す日など、忘れてはいけない予定をモニターへ表示する。
今考えれば簡素な仕組みでしたが、当時の古着衛門にとっては本当に役立つものでした。
そして当時の音源データも、今でも残っています。
2011年5月25日の「閉店アナウンス」、5月29日の「店内アナウンス 改良」、6月16日の「水曜日アナウンス」。
「vol」「改良」「曜日別」といったファイル名や更新日時を見ると、実際に店で使いながら少しずつ整えていったことが分かります。

最初のアナウンスを作ってくれたのは、当時中学生だった娘でした
店内放送を始めるとなれば、当然アナウンス音声が必要です。
今なら自然な音声を作れるソフトもたくさんあります。
でも当時は、今のような環境ではありませんでした。
そこで、当時中学生で、音楽の道を目指していた娘にお願いして、古着衛門のアナウンスを作ってもらいました。
当時の台本も残っています。
そこには、
「全体的にもう少しゆっくり、間を意識」
「2つのアナウンスを合成することがあるので、全部の声質を揃える」
といった録音時のメモも残っていました。
ただ文章を読んでもらうだけではなく、店内で聞いたときに聞き取りやすくなるよう、当時なりに試行錯誤していたことが分かります。

その声は、15年経った今でも古着衛門の店内で流れています。
長く店を続けていると、もちろん良い時ばかりではありません。
つらかった時。
悩みを抱えていた時。
気持ちが沈んでいた時。
店内から流れてくる娘の声に、私自身が励まされたことも何度もありました。
お客様へ情報を伝えるために始めた店内放送が、いつの間にか古着衛門の時間の一部になっていました。
「閉店です」と言うのが、どうしても心苦しかった
もう一つ、店を始めた頃から気になっていたことがあります。
閉店時間です。
閉店時間を過ぎても、お客様が店内にいらっしゃることがあります。
最初の頃は、スタッフがお客様へ声をかけていました。
でも、買い物をしてくださっているお客様に「閉店です」と伝えるのは、どうしても申し訳ない気持ちになります。
そこで使うようになったのが、蛍の光でした。
蛍の光は本当にすごい音楽です。
日本では、あの曲が流れるだけで、多くの方が「あ、閉店なんだ」と理解してくれます。
もちろん海外の方には、この共通認識が通じない場合もあります(笑)。
最初はパソコンから手動で再生していました。
ところが、今度はその再生ボタンを押すこと自体が少し心苦しい。
そこで、閉店時間になれば自動で流れるようにしました。
人が言いにくいことを、仕組みに任せる。
それだけでも、閉店時のスタッフの心理的な負担はかなり違いました。
店には「今日だけ伝えたいこと」もあります
毎日同じアナウンスを流せばよいわけでもありません。
古着衛門には、水曜日の5%OFFがあります。
会員限定の7のつく日20%OFFセールがあります。
17日の誰でもお得な伊奈の日20%OFFセールがあります。
普段とは違う案内を、その日だけ流したい。
これは店舗を続けていれば、ごく自然に出てくる要望です。
そこで現在の「お店サウンド」には、通常のアナウンスとは別に、曜日・毎月の日付・特定日などに合わせて「いつもと違う案内を流す日」を設定できるようにしました。
さらに、スタッフ側がその日に確認しておきたい内容は、「本日のお知らせ」として画面にも表示できます。
これは、15年前に古着衛門で使っていた仕組みにあった「予定をモニターに表示する」という考え方を、現在のお店サウンドにも引き継いだものです。
15年前に「あってよかった」と思った仕組みを、今の技術でもう一度作りました
古着衛門では、この仕組みを15年間使ってきました。
当時はいくつものフリーソフトを組み合わせなければ実現できなかったものです。
でも今なら、もっと分かりやすく、もっと使いやすく、一つのツールにまとめることができます。
そこで作り直したのが、ひとり商いラボの実務ツール「お店サウンド」です。

お店サウンドでできること
お店サウンドは、Windows PCで店内BGMやアナウンスを管理するためのデスクトップツールです。
- BGMを時間に合わせて自動再生
- 通常アナウンスを複数設定
- 曜日・毎月の日付・特定日ごとの特別な案内
- 蛍の光など閉店時間帯の音源再生
- 閉店前・閉店後など用途に合わせた複数音源の設定
- その日の予定を「本日のお知らせ」として表示
- 必要に応じてボタンを押すてアナウンス再生
- 必要なときはBGMや閉店音源を手動スタート
- 現在流れている音源だけをその場で中止
設定した内容は、基本的に時間になれば自動で動きます。
スタッフが毎回時計を見て、同じ操作を繰り返す必要を減らすためのツールです。
お店サウンドはWindows 11(64-bit)専用です。
今は、アナウンス音声もずっと作りやすくなりました
音源そのものは、お店サウンドには付属していません。
自分のお店に合ったBGMやアナウンスを用意して登録します。
現在なら、VOICEVOXなどの音声作成ソフトを使って案内音声を作ったり、Audacityなどの音声編集ソフトで整えたりすることもできます。
BGMについても、利用条件を確認したうえでフリー音源サイトなどから探す方法があります。
15年前には難しかったことが、今ではかなり始めやすくなっています。
特に、これからお店を始める人に使ってほしい
お店サウンドは、小売店だけのツールではありません。
美容室、飲食店、事務所、施設など、決まった時間にBGMや案内を流したい場所なら使えます。
でも私が特に使ってほしいと思っているのは、これからお店を始める人、始めたばかりの人です。
開業したばかりの店は、まだ何も知られていません。
営業時間も、休業日も、セールも、会員制度も、イベントも。
お客様にとっては、知らないことばかりです。
聞いてくださった人にだけ答えていては、どうしても伝わる速度には限界があります。
私は古着衛門を15年続けてきて、こう感じています。
店内放送がある店と、ない店では、お店周知の加速度が違う。
これは古着衛門を実際に続けてきた私自身の感想であり、実感です。
開業初期は、知ってもらうこと、覚えてもらうこと、また来てもらうことの積み重ねです。
営業時間を知ってもらう。
次のセールを知ってもらう。
会員制度を知ってもらう。
次回来店する理由を、一つでも多く持ち帰ってもらう。
そうした小さな積み重ねを少しでも速くできるなら、私はそれが生き残る確率を上げることにつながると思っています。
15年前の自分に渡せるなら、間違いなく渡したいツールです
古着衛門を始めた頃、この仕組みがあって本当によかったと思いました。
だから15年後の今、当時より便利にして、誰でも使いやすい形に作り直しました。
もし15年前、古着衛門を始めたばかりの自分に今のお店サウンドを渡せるなら、私は間違いなく渡します。
そして今、これからお店を始める人にも使ってほしい。
お店周知の加速度を上げる。
生き残る確率を、少しでも上げる。
そのために作ったのが、ひとり商いラボの実務ツール「お店サウンド」です。


