古着屋を開業するとき、「1年間の売上はどのように変化するのか」「売れない時期はいつなのか」という情報が欲しいと思ったことはありませんか?
実際、私が古着衛門を開業するときにも、最も知りたかった情報の一つが、古着屋の月別売上推移でした。
古着の販売には季節性があります。春や秋に売上が伸びる一方、夏場には思うように売れないこともあります。
ただし、どの古着屋も同じ動きをするわけではありません。立地、客層、販売価格、商品の種類、気温などによって売上の動きは変わります。
今回は、2011年に開業した古着衛門の創業初年度の実際の売上データを公開し、そこから読み取れる季節変動と、店舗経営に活かすための考え方を解説します。
古着屋の月別売上推移|2011年・古着衛門創業初年度の実データ
まずは、古着衛門の創業初年度、2011年の月別売上推移をご覧ください。

※このグラフは古着衛門1店舗の実際の売上データをもとに作成したものです。古着業界全体の平均売上ではありません。また、縦軸が0円から始まらないため、グラフ上の変化が強調されて見える点にご注意ください。
グラフから読み取れる3つの特徴
1.春にかけて売上が増加している
1月から売上が伸び始め、3月、4月と上昇しています。グラフでは4月が最も売上の高い月となりました。
春物への衣替えや新生活など、季節の変化が衣類の購入につながった可能性が考えられます。ただし、創業初年度であるため、店舗の認知度が高まった影響なども考慮する必要があります。
2.6月から売上が下がり、8月が最も低い
5月を過ぎると売上は低下し、8月に年間の最低水準となりました。
夏物衣類は冬物のアウターなどに比べて販売単価が低くなりやすく、購入点数や来店動機も変化します。
古着衛門では、その後も8月の売上が弱くなる傾向が見られました。
3.9月から売上が回復し、秋に再び伸びている
8月を底として9月に大きく回復し、10月にも売上が伸びています。11月も比較的高い水準を維持しました。
秋物や冬物への需要の切り替わりが、販売を後押しした可能性があります。
一方で、12月には売上が下がっています。この点からも、「冬だから必ず売れる」という単純な話ではないことが分かります。
このグラフから分かること、分からないこと
このデータは、2011年の古着衛門で実際に起きた売上の動きを示しています。
春と秋に売上が伸び、夏に落ち込むという特徴は読み取れますが、これだけで「すべての古着屋で8月が最も売れない」「古着屋の平均月商は100万円前後」と結論づけることはできません。
また、売上金額だけでは、来店客数が変わったのか、客単価が変わったのか、商品構成が影響したのかまでは判断できません。
重要なのは、自分の店舗でも毎年同じような動きがあるのか、数字を残して確かめることです。
古着屋は何月に売上が伸びやすい?季節ごとの特徴
古着屋では、取り扱う商品の種類やお客様の生活環境によって、季節ごとの売れ方が変わります。
古着衛門の経験を参考に、季節別に確認したいポイントを整理します。
| 時期 | 需要の変化 | 経営上の確認ポイント |
|---|---|---|
| 1~2月 | 冬物需要と春物への移行期 | 冬物在庫、春物の準備 |
| 3~5月 | 春物・新生活関連の需要 | 販売機会、商品補充、売れ筋 |
| 6~8月 | 夏物中心。単価や来店動向が変化 | 客数、客単価、在庫、固定費 |
| 9~11月 | 秋冬物への切り替え | 需要の立ち上がり、秋冬物の販売 |
| 12月 | 年末の生活行動や購買需要の変化 | 前年実績、年末の営業日数 |
これは季節ごとに確認したい項目を整理したものであり、業界全体の売上予測ではありません。
例えば、夏物を中心に扱うお店と、スウェットやアウターを中心に扱うお店では、売上のピークが異なる可能性があります。
自分のお店の売上推移と照らし合わせることが重要です。
猛暑で売上の季節変動がずれることもある|2023年の実例
毎年似た季節変動があっても、その年の天候によって動きが変わることがあります。
古着衛門では、2023年に印象的な出来事がありました。
例年は8月の売上が落ち込み、9月に回復へ向かうことが多いのですが、2023年は9月の売上が8月を下回りました。
この年は暑さが長引き、秋物衣類への需要が例年と同じタイミングでは立ち上がらなかったと考えています。
気象庁によると、2023年の夏(6~8月)の日本の平均気温は、当時の統計で1898年以降最も高くなりました。また、9月も東日本・西日本では1946年の統計開始以降、9月として最も高い平均気温を記録しています。
参考:気象庁「2023年夏の天候」/気象庁「2023年9月の天候」
古着衛門でも、10月に入って朝晩の気温が下がり始めると、売上が通常の水準へ戻りました。
もちろん、売上は天候だけで決まるものではありません。商品の品揃え、販売価格、来店客数、営業日数なども関係します。
ただし、季節が変わる暦上のタイミングと、お客様が実際に衣類を必要とするタイミングは必ずしも一致しないという点は、販売計画を考えるうえで重要です。
古着屋の売上が落ちたら、何を確認すればいい?
売上が減ったとき、すぐに「売れなくなった」「商売が悪くなっている」と判断するのは早いかもしれません。
まずは、数字をいくつかに分けて確認してみます。
1.客数と客単価を分けて考える
基本となる考え方は、次の式です。
売上 = 購入客数 × 客単価
売上が下がった原因には、購入客数が減った場合と、客単価が下がった場合があります。
例えば、購入客数は変わらず、夏物中心の販売になって客単価が下がったのであれば、客数を増やす施策だけでは原因に対応できない可能性があります。
反対に、客単価が変わらず購入客数が減っているのであれば、来店動向を確認する必要があります。
購入客数と来店客数を別々に把握している場合は、購入率の変化も確認できます。
2.前月だけでなく前年同月と比較する
7月から8月に売上が下がったとしても、それだけで異常とはいえません。
前年も同じ程度に下がっていたなら、季節による変動の範囲かもしれません。
一方、前年より大幅に下がっている場合は、季節以外の変化も確認したいところです。
営業日数や営業時間が異なる場合は、月商だけでなく1営業日あたりの売上も比較すると、違いが見つけやすくなります。
3.売上と利益を混同しない
月商が高くても、仕入れや経費が大きければ利益が残るとは限りません。
売上の季節変動に加えて、仕入費用、家賃、人件費、光熱費なども確認します。
古着衛門では、例年8月は単月の損益分岐点を下回ることがあります。
創業1年目は、売上が落ち込むと「このままで大丈夫なのだろうか」と不安になりました。
しかし、2年目、3年目と数字を積み重ねることで、例年の季節変動なのか、別の問題が起きているのかを考える材料が増えました。
単月の赤字を軽視してよいわけではありませんが、年間を通じた資金繰りや収益を把握することで、必要以上に慌てず判断できるようになります。
8月の閑散期はどう対策する?無理に売ろうとしない選択肢も
売上が低下する時期には、セールや広告、イベントなどで売上を増やす方法が考えられます。
もちろん、それが有効な場合もあります。
ただし、季節的に購買需要そのものが弱いときに、無理に販売量を増やそうとしても、費用や労力に見合った結果が得られるとは限りません。
お腹がいっぱいのお客様に、さらに食事を勧めるようなものです。
古着衛門では、需要の弱い時期を無理に忙しくするのではなく、必要な仕事を進めたり、休めるときに休んだりすることも、一つの経営判断だと考えています。
閑散期に確認したいこと
- 値下げやセールを行う場合、利益がどの程度残るか
- 秋冬に向けて必要な商品や在庫が揃っているか
- 売場の整理や商品管理など、繁忙期前にできることはないか
- 広告やイベントに使う費用を回収できそうか
- 資金繰りに無理がないか
- スタッフの休暇や設備のメンテナンスを組み込めるか
売上が少ない時期でも、固定費の支払いは続きます。休むことを選択する場合も、事前に年間収支や運転資金を確認する必要があります。
大切なのは、「売上が落ちたから何かをする」のではなく、落ちた理由と、取るべき行動を分けて考えることです。
売上が伸びる時期には何を準備する?
売上が伸びる時期には、その機会を逃さないための準備が必要です。
例えば、古着衛門の創業初年度のグラフを見ると、春と秋に売上の山がありました。
同じような季節変動が続くのであれば、需要が高まり始める前に、売場や在庫を整えておくことが考えられます。
- 前年の売れ筋商品と販売数量を確認する
- 季節に合った商品を早めに準備する
- 販売が伸びる時期に欠品しやすい商品を確認する
- 在庫を増やしすぎて資金を圧迫しないようにする
- 必要に応じてスタッフの配置や作業計画を調整する
また、シーズン前の仕入れについては、次の記事でも整理しています。
売上データは1年だけでなく、長く記録するほど役に立つ
2011年の創業初年度、古着衛門には前年の売上データがありませんでした。
そのため、売上が落ちたときには、それが季節的なものなのか、経営上の問題なのかを判断する材料が不足していました。
2年目になると前年と比較できます。3年目には、過去2年間と比べられるようになります。
記録が増えるにつれて、自分の事業にはどのような季節変動があり、何が普段と違うのかを考えやすくなります。
古着衛門では、2011年の創業当時から日々の売上をExcelへ記録してきました。
最初から複雑な分析をしていたわけではありません。毎日の数字を残し、後から振り返れる状態にしておくことを続けてきました。
その経験については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
関連記事:毎日1分の記録が、事業の力を見せてくれた|古着衛門の実績から生まれた「商いログ」
数字と一緒に、出来事も残しておく
売上の数字だけでは、その日に何があったのかまでは分かりません。
例えば、次のような出来事を一緒に残しておくと、後から比較する際の参考になります。
- 気温や天候の大きな変化
- セール・イベントの実施
- 営業時間や営業日数の変更
- 商品の価格変更
- 仕入れや売場の変更
- 近隣環境や社会情勢の変化
大切なのは、記録項目をむやみに増やすことではありません。無理なく続けられる形で数字を残し、必要なときに振り返れる状態を作ることです。
古着屋の売上についてよくある質問
Q.古着屋は何月が一番売れますか?
すべての古着屋に共通する売上のピーク月は断定できません。古着衛門の2011年の実績では4月が最も高く、10月にも売上の山がありました。商品構成や地域、客層によって異なります。
Q.古着屋は8月に売上が落ちやすいのですか?
古着衛門では8月に売上が低下する傾向が見られます。ただし、夏物に強い店舗や観光地の店舗などでは、異なる動きになる可能性があります。
Q.開業1年目の古着屋の月商はいくらですか?
開業初年度の月商は、店舗規模、立地、営業日数、価格帯、品揃えなどによって変わります。この記事のグラフは古着衛門の実績であり、一般的な平均月商を示すものではありません。
Q.売上が前年より下がったら、すぐに対策が必要ですか?
まずは、営業日数、購入客数、客単価、商品構成、天候などを確認しましょう。原因が分からないまま値下げや広告を行うと、費用だけが増える場合もあります。
まとめ|売上の季節変動を知ることは、経営判断の材料になる
古着衛門の2011年創業初年度のデータでは、春と秋に売上が伸び、8月に落ち込む動きが確認できました。
ただし、2023年のように暑さが長引き、例年とは違う売上の動きになることもあります。
売上が伸びる月も、落ちる月も、その数字には何らかの背景があります。
大切なのは、売上の増減だけを見て一喜一憂するのではなく、過去の実績やそのときの状況と照らし合わせて考えることです。
1年目は不安。2年目で確認。3年目以降は、経験が数字によって少しずつ裏付けられていく。
売上を記録することは、事業の流れを理解し、次の判断をするための材料を残すことでもあります。
古着衛門での実体験から生まれた、売上記録と振り返りの考え方を実際の事業で使えるようにしたツールが、ひとり商いラボの「商いログ」です。
古着屋に限らず、季節によって売上が変わる事業では、自分自身の記録が長く役に立つはずです。



